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ウーフで出会ったヨガマスターおばあちゃん

wwoof in canada ウーフ
wwoof in canada

カナダはサターナ島で2か月間のウーフをした。
ホスト夫婦のお家から徒歩3分のところに、ホスト夫婦の旦那さんのお母さんが住んでいた。
そのおばあちゃんの、お話。

ホスト夫婦、ウーファーを置いて旅に出る

わたしがウーフでお世話になったホスト夫婦はいつだってとっても自由だった。
わたしが滞在していた間にも、わたしともう一人のウーファーを残して約1週間キャンピングカーで旅に行っていた。そのくらい人生を楽しんでいた。
多分あまりないパターンだと思う。だって、ウーファーを置いて旅に行ったら、その間ウーファーはどうすればいいのだろう。仕事をさぼるかもしれない。

ウーファーも子どもじゃないから料理くらいはできるだろうけど、家を完全に不在にして昨日今日であったような、いわば他人に家を預けるのは不安だろう。

ホスト夫婦のオーガニックハーフファームはあくまで副業だ。
なぜなら彼らには本業があるから、例え副業を1週間休んでも大きな問題はないようだったし、仮に私たちがサボっても気にならなかったのかもしれない。
恐らくわたしたちの日ごろの仕事への態度から信頼してくれたのだと思う。ホストは本当に旅に出てしまった。

ホスト夫婦の家から歩いて5分のところに、ホスト夫婦の旦那さんのお母さんが住んでいた。
分かりやすいようにおばあちゃんと呼ぶ。
それまで交流はほとんどなかったのだが、ホスト夫婦が旅に行っている間の夜ご飯はおばあちゃんのお家で食べることになった。
ホスト夫婦からは、おばあちゃんはちょっと変わっていると聞かされていたが、具体的なことは知らなかった。

50代でインドへヨガ修行

初めておばあちゃんのお家へ行った。そこはインドだった。
おばあちゃんは70代で、インド人の旦那さんがいた。
ホスト夫婦のお家は近代的で最新の設備が揃っていたが、おばあちゃんの家は対象的で素朴。
それでありながらインテリアはインドテイストでそろえられていた素敵だった。

なんとおばあちゃん、50歳半ばでヨガマスター取得のためインドへ修行に行ったそうだ。
おばあちゃんのことをちょっと変わっている、と言っていた理由が少しづつ分かった気がした。

インド人の旦那さんとはその時に出会ったらしい。もちろん英語が話せる。
2人はすでにリタイアしていて仕事はしていなかったが、家の前の広大な畑でお野菜を育てていた。
トマトとかキュウリとかシンプルなものだ。
完全なビーガンではなかったけれど、お肉類はあまり食べない。
畑でとれたお野菜をメインに食事をしていた。

初めておばあちゃんの家に夜ご飯を食べに行ったとき、インド人の旦那さんお手製のダルカレー(豆のカレー)をごちそうしてくれた。さすが本場のインド人が作るカレーだった、豆の優しい味がしてすごく美味しかった。
それと、キュウリのスライスが山盛り出てきた。野菜はキュウリを食べておけば問題ないとのこと。
理由はよくわからなかったけど、海外のキュウリは大きくて皮が薄くて水分が多くて、わたしはどちらも好きだが日本のキュウリとは微妙に違う。

次の日はチキンカレーだった。そして山盛りのキュウリ。
その翌日もカレー。と山盛りのキュウリ。
何種類もカレーをご馳走になった。どれもとても美味しかった。
そしてよくわからないが、キュウリの栄養をとても信頼しているようだった。

毎晩、食事をしながら話しをしていると徐々におばあちゃんと打ち解けてきた。
あまり社交的なタイプではなかったけれど、こちらが質問すればインドでのヨガ修行の話もしてくれた。修行には一人で行ったそうだ。それまでヨガを続けていて、というよりは突然興味がわいて衝動的に行ったらしい。行動派である。

修行から帰ってきた後も、今も毎朝ヨガをやっているらしい。
もう一人のウーファーがヨガをやってみたいと言ったら、おばあちゃんがヨガ教室を開いてくれることになった。
普段は9時から畑の仕事があるので、仕事がお休みの日限定だ。

初めてのヨガ教室の日。
約束の時間にヨガルームとして使われている部屋に行くと、室内にはガネーシャのポスターやインドで買ってきたであろう小物など沢山のインドアイテムが置いてあった。
壁にはヨガのポーズの描いたポスターが貼ってあった。
特別な説明はなく、おばあちゃんのやる姿を見て真似しろ、という職人スタイルでヨガの時間が始まった。それまでに単発でヨガ教室に参加したことはあったが、ほぼヨガ初心者のわたし。

なんと。一番最初はマントラを唱えた。
おばあちゃんがラジカセの再生ボタンを押すから、てっきりヒーリングミュージックが流れるのかと思ったら全然違った。
おばあちゃんがヨガ修行に行ったときに録音してきたというマントラだった。後ろで牛の鳴き声が聞こえたり、生活音が聞こえる中でマントラが始まった。

マントラを聞くのはそれが初めてだった。あれは何語なのだろう。要はお経みたいなもの。
おばあちゃんの唱えるマントラとラジカセから聞こえてくるマントラは微妙に違う。
それは英語でも日本語でもなく独特の発音だから正しく再現することは難しい。
聞こえてくるマントラを何となく真似して、小さな声で再現してみた。

マントラが終わると、ついにヨガが始まった。見よう見まねでポーズをとっていく。
おばあちゃんのヨガのポーズはポスターの姿と全く同じではなかった。だって70歳を超えている。それでも無理のない、しなやかなポーズだった。

ポーズを進めていくにつれて、そもそもヨガはポーズの再現性の高さを求めるものではないことを悟っていく。おばあちゃんは心を落ち着けて、自分の体と会話をしながら呼吸をしているような気がしてきた。
それまでのわたしは、ヨガはどれだけ体が柔らかいかとか、きれいなポーズを長時間キープするものなのかなと思っていたが、そうではないようだった。
ヨガって人に見せるたり外に向けるものではなくて、自分に向けて行うのものみたいだ。

最後に向かい合ってお辞儀をして初めてのおばあちゃんのヨガ教室は終わった。

ユニークなおばあちゃん

おばあちゃんのヨガ教室は期待以上に心地が良く、仕事がお休みの日はおばあちゃんのヨガ教室を開いてもらうことになった。

ヨガ教室の時間は言葉少なく、あんまりお話することはなかったけれどヨガ教室を通じて距離が縮まり、ホストが旅から帰ってきてからも時々夜ご飯をご馳走になった。
いつも美味しいカレーを作ってくれた。
おばあちゃんは日本のことはあまり知らなかったが、わたしたちが食事のときにいう「いただきます」という言葉の意味にすごく感心していた。

「いただきます」という言葉は小さいころから食事をする前にいう言葉として認識していたが、その意味について深く考えたことはなかった。
英語には、いただきますにあたる言葉がない。
おばあちゃんは「いただきます」はこれから口にする生物、植物の命を「いただく」という意味だと認識していて、それを食事の前に言葉にして感謝するのは素敵なことだと言ってくれた。

調べてみると、いただきますの語源はいくつかあって、食事を作ってくれて人への感謝と生物・植物の命への感謝だと言われているようだ。

日本語が分かれば、いただきますが大体そんな意味なんだろうと推測するだろうけれど、英語にはその言葉がないしそれを言葉にして表現する機会も少ないのだろう。
食事前にルーティンとして言っていた「いただきます」の言葉。ちゃんと気持ちを込めようと思った。

ホスト夫婦がおばあちゃんをちょっと変わっていると感じている理由にはもうひとつあった。
60歳くらいで整形手術をしたそうだ。わたしは整形前を知らないし、どこを整形したのかも知らないし。整形跡が不自然に見えることもなかった。
確かにあまり聞く話ではないけれど、おばあちゃんがそれをしたくて、納得の上で整形したならそれでいいと思う。

彼らの生活や考え方を見ていると、ホスト夫婦も、おばあちゃんも、人生を存分に楽しんでいるんだなとすごく感じた。
ホスト夫婦の旦那さんは、人生はお金じゃないと明言するし、奥さんも自分の好きな畑仕事に熱心だ。おばあちゃんは50代でインドへヨガ修行に行くし、整形だってする。
みんな人生は謳歌している姿が本当にかっこよかった。

毎日は忙しく過ぎていくけれど、人生は一度きりだ。
人生は決して長くない。
そんな当たり前のことを日常に忙殺されているといとも簡単に忘れてしまう。
毎日色々ありますけどね。人生は短い。楽しんだもの勝ちです。

自然に囲まれて、喧騒から離れて穏やかな時間を過ごしながらそんなことを思い出させてくれたウーフ体験でした。

世界は広いんです。